スウェーデン研修も5日目。今朝も4時ごろに日本からの電話でたたき起こされました。毎日4時ぐらいに電話が多いと思ったら、日本はちょうどお昼の12時。お昼休みをねらっているのですね。まあ、目覚まし時計代わりになっていいですが。
今日は朝9:30に出発。アルベスタの近くのイェムラ(Gemla)という街にある、ミッキィ(Micki)というおもちゃメーカーを訪問しました。温かい感じの木のおもちゃとクマのマークは、最近日本でも人気が出てきましたね。実はここ、障害をもった人たちを雇用しているのです。社員は50人ほどで、そこに1日6-8名の障害者が働きに来ています。
実際におもちゃを作っている工場を見学しながらお話を伺いました。障害のある人たちのグループは、簡単な組み立て作業をしたり、パッキングをしたり、社員食堂の掃除をしたり、働いている人たちにおやつのフルーツを届けたりしています。
彼らが働く部屋に行くと、ちょうど木の機関車に磁石を取り付ける作業をしているところでした。障害があっても作業がしやすいように、また安全なように、道具にも工夫がされているのが印象的でした。数年前にはフレドリック・ラインフェルト首相が訪問したということで、写真が飾ってありました。
また、彼らは、他の部署で人手が足りなくなると、応援に駆けつけます。ですから、「ミッキィの救急チーム」とも呼ばれているとのこと。ひとりひとりが生き生きと働いている様子が、とってもステキだなと思いました。
さて、見学を終えた私たちはアルベスタへ。昨年も訪れた、マスミさんとエマニュエルさんが経営する、カフェ、"Café St.Clair"でランチをいただきました。近くの会社の人などたくさんのお客さんが列を作るほどの大人気店。みんなが「おいしい」と言いながらお味噌汁を飲んでいる光景は、なんだかちょっとうれしいですね。
お昼からは、急遽アレンジしてもらった、ケアマネジャーへのインタビュー。実際に高齢者の方がどのようなプロセスでサービスを利用するのか、お話を聞きに行きました。ヴェクショー市の福祉関係のオフィスが入っている建物に行き、出迎えてくれた人たちを見てびっくり!てっきり中年の女性だと思っていたら、なんと、若くてイケメンのアンダシュさん(25)とヨハネスさん(27)だったのでした。
ヴェクショーでは、サービスが必要なって申請すると、本人・家族・医師・看護師・OT・PT、そしてケアマネジャーで会議をして、その方にどのようなサービスが必要なのか、それとも施設に入るべきなのか、が決定されます。そこではあくまでも本人の意思が尊重され、在宅の生活を望むのであれば、できるだけその希望はかなえられます。その後は年に1回、現在のサービスが適切かのチェックをするということで、ひとりのケアマネジャーは150-200ケースを持っているとのこと。また、サービスの利用開始までにはたった3日ぐらいしかかからないということでした。
お若いふたりだったので、次のステップはどう考えているのかと聞いてみると、市の福祉職や高齢者施設の施設長かなあ、というお返事でした。きっとこれからもいい仕事をされることでしょう。
続いて14:00からは、ホフスルンド(Hovslund)という高齢者施設を訪問しました。ここには昨年も訪れたルンデン(Lunden)という、とってもこぢんまりとした家庭的なデイサービスがあります。クリスマスやイースターといった季節のイベントや、動物やキノコといった身近な話題まで、毎週何かテーマを決めて、それにそってアクティビティの内容を考えていきます。ちなみに今日はスウェーデンの「チーズケーキの日」だということで、チーズケーキがテーマになっていました。手づくりのチーズケーキをいただきましたが、チーズの香りがとてもよく、おいしかったです。
ホフスルンドはかなり規模の大きな施設なので、地域の方々が気軽に利用できるスペースがたくさんあります。特に目を引いたのは、30台はあろうかという大きな機織りの機械。地域のサークルの方々がやってきて、みんなで楽しんでいるとのことでした。
お話をしてくださった施設長のアンクリスト(Ann‐Christin Augustin)さんは、ヴェクショー市の家族支援員としてのお仕事もしています。介護をしている家族と個別に、あるいはグループで面談をしたり、介護や認知症に関する教育をしたり、イベントをしたりと、さまざまな活動をしています。ケアを必要とする本人だけではなく、しっかりとその家族のサポートができている、というところに、スウェーデンのすごさを改めて感じました。
今日のスケジュールを終了し、ホテルに戻って、少し鈴木先生の目から見た「日本」について、お話を伺いました。「どうしてスウェーデンでうまくいくことが日本ではできないのだろう?」という私の疑問に答えてくださったのでした。
まず言われたのは、「日本は細かいところばかりを見て、全体が見えていないことがあるのではないか」ということ。スウェーデンでは、鳥瞰的で長期的な視点で物事が組み立てられているという場面がたくさんあります。そして「スウェーデン人は真面目だけどクソ真面目ではない」ということ。だから、仕事の時間はとっても効率よく働くし、終わればプライベートが充実している。それがまた仕事のモチベーションに繋がる、というのです。
これには、目から鱗が落ちたような気がしました。日本人はどうしても仕事が第1になって、モチベーションに関しても仕事の中だけで解決しようとする。でもスウェーデン人にとっては仕事は人生の一部だから、トータルで物事を見ているんだ、ということに改めて気付かされました。
さあ、スウェーデンで学んだことをどう日本に生かしていくのか、大きな宿題が出ました。
「学んだことを実行に移すことができる人が"若い人"だよ」鈴木先生がいたずらっぽく笑いながら言ってくれました。
Tsukasa