ヴェクショーで迎える2回目の朝。この時期のスウェーデンの天気予報はもちろん「曇りときどき雨」。でも、ちょっとだけ太陽が顔を覗かせてくれて、ラッキーでした。
今日は朝からピールベッケン幼稚園(Pilbäcken)を訪問し、カタリーナ(Katarina Lidén)さんのお話を伺いました。ここは、1971年にオープンした10クラスの大きな幼稚園で、2002年よりレッジョ・エミリア(Reggio
Emilia)・アプローチを実践しています。レッジョ・エミリア・アプローチとは、イタリアを発祥とする保育哲学で、プロジェクト活動や創造力を育む環境、そしてドキュメンテーションを活用し、子どもたちひとりひとりが持つ力を引き出すアプローチです。
カタリーナさんはストックホルムにあるレッジョ・エミリア研究所でトレーニングを受けてきていて、このアプローチに取り組む他の園の先生達も含めて、指導者として活躍されています。今年のテーマは「木」。新学期が始まる前から先生達はテーマを通した教育の研修を受け、子どもたちの力を引き出す準備をしていきます。子どもたちは、みんなで自分たちのクラスの木を表現したり、葉っぱを観察して絵を描いたり、木の枝を使って数を学びながらオブジェを作ったりと、元気いっぱい。でも、何気ない遊びのひとつひとつにしっかりとした理論的な裏付けがされているのには驚かされました。
「レッジョ・エミリアはマニュアルではないから、先生たちは大変。でもその分得られるものも大きいからやりがいにつながるのです」というカタリーナさんの言葉が印象的でした。
実はこのピールベッケン、お隣は小学校になっていて、子どもたちは共用の食堂で給食を食べます。ちょっと空いたタイミングを見計らって、私たちも一緒にいただきました。この秋からヴェクショー市では、給食の質の不公平をなくそうと、全市で統一したメニューが出されることになりました。でもこのメニューが不評・・・。次の学期からは、ピールベッケンの敏腕栄養士さんが作ったメニューが全市で使われるようになるとのことです。でも、いつもここで驚かされるのは、ビュッフェスタイルになっているということ。自分がどれだけ食べるのが適切なのか、自分で判断させるというのは、とても大切なことだと思います。
午後はまず、布を使った作業を行う障害者のある方たちの作業所、テキスティール・グルッペン(Textilgruppen)を訪問しました。今年移転してリニューアルオープンしたということで、以前よりも広く、快適で、作業のしやすい環境になっていました。それだけ利用者のみなさんから人気があるということでしょう。ここでは、機織りをしたり、布の染色をしたり、シルクスクリーンで絵を付けたり、出来た布を利用して様々なグッズや作品を作ったりと、見ているだけでワクワクするような作業に、みなさん一生懸命取り組んでいました。利用しているメンバー同士もとても仲が良さそうで、ここにも人気の秘密があるのでしょう。最近では、公共施設はもちろんのこと、一般企業からもグッズ製作の依頼などがあって、大忙しとのこと。みなさんが誇りを持って作業に取り組んでいるということが、とてもよく伝わってきました。
ちょっとだけ空き時間ができたので、ヴェクショー市立図書館へ。ここは私が留学していたころにリニューアルされた、とても開放的で美しいデザインの図書館です。・・・あれからもう12年ほど経ちますが。リニューアルに際し、大きなシンボルツリーを切らなければいけないというので、反対運動があったりもしたそうなのですが、その木は加工され、図書館のカフェの床材や壁面を飾るオブジェになっています。自然をとても大切にするスウェーデンの人たちの気持ちが、こんなところにも息づいているのだと、うれしくなりました。コーヒーのおともはもちろん、シナモンロール。3人のスタッフたちも、本場の味に喜んでいました。
引き続き訪問したのは、知的障害のある方のグループホーム。6人の方が住んでいるのですが、みなさん学校の同級生で、卒業後22年間一緒に暮らしているとのこと。さらに驚かされたのは、5人に対してスタッフが9人いて、さらにもう一人の方に対しては4.5人もスタッフがついているということ。「障害があっても、高齢になっても、すべての人に"ふつうの暮らし"を送る権利があり、社会にはそれを支える責任がある」というノーマライゼーションの理念が、当たり前のように実践されているということでしょう。とても貴重な訪問となりました。
夜は、私の12年来の親友、エリック(Erik
Bratt)と彼女と一緒に居酒屋「もし」へ。ここはスモーランド博物館の中にあり、ヴェクショーの人気寿司店「もしもし」がプロデュースしたお店です。早い時間だったにもかかわらず、店内はいっぱい。巻き寿司、焼き鳥、お好み焼き、餃子、魚料理・・・と、いろいろ試してみましたが、納得できるものと納得できないもの(笑)があり、とても楽しいディナーとなりました。こうやって、いつ来ても大歓迎してくれる友達がスウェーデンにいてくれることが、とてもうれしい夜でした。
Tsukasa