オリンピアスウェーデン研修2019―その3

雨の音にまた早く目が覚めてしまった、ヴェクショーの朝。今日もしっかりと朝ご飯を食べて、ワクワクする1日のスタートです。

 

まず10:00からは、Humana社がヴェクショー市から運営委託を受けている高齢者施設、"Humana Södra Järnvägsgatan" を訪問しました。例年通り、グループリーダーのマリソール(Marisol)さんが案内をしてくれました。ここの施設は、9名のユニットが2ユニットずつ4つのフロアに配置されているので、定員は72名となっています。現在、退居が相次いだこともあって、8室が空室となっています。収入が減ってしまって困るのではないかと思って聞いてみると、スタッフを減らして対応しているとのこと。ほとんどの人がフルタイムではなく75%で働くなど、フレキシブルな働き方をしているので、こういうことが可能になっています。訪問したときはちょうど、1900年代はじめのスウェーデンについてみんなで話をする、回想法のプログラムの真っ最中でした。毎日いくつかのプログラムが用意され、施設内のデジタルサイネージでお知らせされているほか、居室のテレビでも確認することができます。居室のカギは、入居者が手首に付けている緊急アラームで開け閉めができるほか、スタッフが一人一台持っているスマートフォンでも開け閉めが可能です。テクノロジーが効果的に活用されていて、民営化のメリットが生かされている感じがしました。

 

街中の人気イタリアンレストランでランチの後は、知的障害の方のデイケアセンターのひとつ、テキスティール・グルッペン(Textilgruppen)の訪問です。ここには約20名の利用者が登録し、毎日10人ほどの方が通っています。自分たちで機織りをしたり、刺繍をしたり、布の染色をしたり、シルクスクリーンで絵付けをしたりと、布を使った素敵な作品を製作しています。また、3か月前にはコンパクトな陶芸の窯が導入されたこともあって、カップやお皿などを作ったりもしています。ここで作られた作品は、昨日訪問したパッペリーアンのショップで販売されるほか、最近では公共の施設や病院、学校、そして個人の人から注文を受けて販売することも増えているようです。一通り見学を終えたあと、利用者・スタッフのみなさんと一緒に、フィーカ(Fika)の時間となりました。スウェーデン人の生活に欠かすことのできない、お茶の時間です。コーヒーや紅茶を飲みながら、日本の障害者福祉の取り組みや私たちの仕事について、たくさんの質問をいただきました。私たちがスウェーデンの福祉に関心をもっているのと同じように、彼らも日本のことについて興味を持ってくれていることをうれしく思いました。ただ見学をするだけではなく、このようにディスカッションの機会を持てて、非常によい経験となりました。

 

見学を終えた私たちは、リンネ大学に向かいました。来年の5月にソーシャルワークを学ぶ2名の学生の実習を、大阪大学とオリンピアで受け入れることになっているので、実習コーディネーターのズムさんとその打ち合わせを行いました。スウェーデンの実習のカリキュラムは、日本のものと比べて非常に細かいところまで目標設定がなされていて、評価もその観点にそって行われます。以前から、スウェーデンのソーシャルワーカーの教育のレベルの高さには驚かされていましたが、その裏側を知ると納得がいきます。

 

さて、18:00からは今年初めてプログラムに組み込まれた、"Overpowered E-sport Center"を訪問しました。ここは、コンピュータやVRを使った言わばゲームセンターなのですが、毎週火曜日の夜は、ヴェクショー市から委託を受け、様々な障害を持ったり不登校・引きこもりになったりしている子どもたちのためのプログラムが行われています。ただ単にゲームをさせるだけではなく、スタッフが寄り添ってコミュニケーションを取っていて、子どもたちが生き生きとした様子が非常に印象的でした。付き添いで来ていたお母さんにお話を聞いてみると、「これまで子どもが引きこもっていて地獄のような日々だったのが、ここに来るようになって友達ができ、会話も増えてきて、以前は想像もできなかった生活をしています」とおっしゃっていました。このゲームを使った取り組みはスウェーデンでも初めてとのこと。これからが楽しみです!!

 

今日も長い1日となりました。そろそろ旅の疲れもたまってきたとこなので、夕食をとってちょっと早めに解散しました。明日の研修も楽しみです!!

 

Tsukasa