オリンピアスウェーデン研修2019―その5

充実した時間はあっという間に過ぎ、いよいよヴェクショーでの最終日の朝を迎えました。少しの時間も無駄にできないということで、朝6:30に朝食をとり、荷物をまとめてホテルをチェックアウトしました。手作りのリンゴンベリーのジャムやニシンのマスタード漬けがしばらく食べられなくなるかと思うと、ちょっと寂しいですね・・・。

 

今日の最初の訪問先は、"Skogsleken"というこども園です。ここは2010年に民営のこども園としてオープンしたのですが、オーナーの引退に伴って2015年からヴェクショー市営のこども園となっています。日本では公立保育園の民営化が行われていますが、こちらでは逆のパターンもあるということに驚かされます。以前にこの研修で訪問していた"Pilbäcken"こども園と同じく、イタリア発祥の保育哲学、レッジョ・エミリア(Reggio Emilia)・アプローチを実践しています。園内を見学させてもらっていると、子どもひとりひとりの自主性や能力を大切にした保育が行われている様子がとてもよく伝わってきました。園のすぐ近くには森が広がっていて、屋内での活動と野外での活動がバランスよく取り入れられていました。

 

続いては、この研修で必ず訪問している高齢者施設、トフタゴーデン(Toftagården)へ。市営の高齢者施設の中で最も高い評価を得ているのがこの施設です。ここは4つのユニット、計35室で構成されていて、3つのユニットは高齢者の、もうひとつのユニットは、身体障害のある方のためのユニットになっています。建物は平屋建てで、4つのユニットの中心に食堂や庭が配置され、入居者のみなさんが自然に集まりやすい構造になっています。以前はユニットごとに全ての食事をしていましたが、運動の機会を作ってもらうために、昼食は外部の人たちにも開かれたメインのダイニングを使用しているとのことでした。施設長のアン・マリーさんが、今回導入されたばかりの勤務シフト作成ソフトを見せてくれました。それぞれのスタッフがまず勤務の希望を入力し、スタッフ間で調整をした後に、施設全体での調整をするそうです。これを導入することにより、より効率的でスタッフの希望に添ったシフトが作れるようになったということで、評判は上々のようです。また、スタッフひとりひとりのこれまでの経歴や、研修の受講状況もコンピュータで管理されていて、市営の施設であれば異動があってもデータが引き継がれるとのこと。働く人の環境をしっかりと整えることによって、よいサービスを提供するという姿勢がここにも表れていました。

昼食は私たちもトフタゴーデンのダイニングでいただきました。この日のメニューは豚肉のミートボールまたはサーモンのスープ。キッチンスタッフの方々もとても親切にしてくださり、ますますトフタゴーデンのファンになりました。

 

引き続き午後からは、安心住宅(Bo Tryggt)を訪問しました。ここは、高齢者の生活をサポートする様々なテクノロジーやアイディア商品を紹介する、モデルルームのような場所になっています。2012年にオープンし、当初は高齢者団体などの訪問が多かったそうですが、最近では知名度も上がり、一般の高齢者のグループや個人で来られるかたも増えてきたようです。見守りカメラや緊急アラームといった大がかりなものから、高齢者が持ちやすい調理器具やカトラリー、スープでも食べやすい工夫がされたお皿など非常に身近なものまで、ありとあらゆるものが展示してあります。私自身、介護とテクノロジーの活用に関する研究を国内外で行っていますが、いまあるテクノロジーを生かすという点においては、スウェーデンの取り組みが最先端をいっているのではないかと思います。これからも継続して調査していきたいですね。

そして今回の研修では最後のプログラム、障害者の余暇活動のコーディネーターのお二人からお話を伺いました。今年度、ヴェクショー市では60種類近い障害者のための余暇活動のプログラムが行われています。散歩やカフェ、料理、ダンス、釣り、ボウリング、アイスホッケー観戦、日帰り旅行など、その内容は様々。余暇も含めて「ふつうの生活」であるという理念がとてもよく伝わってきました。

 

研修の残り時間もわずかとなり、レンタカーにガソリンを入れ、支払いを終えた私たちは、ヴェクショーからひとつ隣のアルベスタ(Alvesta)駅に向かいました。いつも研修でお世話になっている、日本人のマスミさんとご主人のエマニュエルさんが運営する"Café St.Clair"(http://saintclair.se/)に寄るためです。スウェーデンのミシュランガイドともいわれる"White GUIDE"に2014年から載り続けていて、いつ行ってもお客さんでいっぱいの超人気カフェとなっています。今年はスケジュールがタイトだったので、いきなりの訪問となってしまいましたが、「おかえりなさい!!」といつものようにとても温かく迎えてくれました。わずかな時間でしたが、とてもおいしい手作りのシナモンロールやコーヒーをいただいて、お店のInstagramにも写真を載せてもらいました。マスミさんが日本から遠く離れたスウェーデンでがんばっている様子に、私たちもなんだか元気をもらえますね。

そして駅に移動した私たちは、この研修のコーディネートや訪問への同行、そして通訳にと大変お世話になった鈴木先生ともここでお別れです。鈴木先生あってのこの研修。いくら感謝してもし尽くせない思いです。電車の扉が閉まる瞬間まで話は尽きませんでしたが、また日本でお会いできることを楽しみにしています。

 

アルベスタから首都のストックホルムまでは約3時間半。ハードな時間の疲れから、ウトウトしているうちにあっという間に到着しました。いつも利用している駅前の"Hotel C"にチェックインして、夕食へ。ヴェクショーと比べるとさすがは首都。建物の数や高さ、人の数も全然違います。明日に備えて今日は早めに解散することとなりました。

 

Tsukasa